「椿」の絵画や工芸 茨城県天心記念五浦美術館企画展

【椿information】2023-5-11

椿の花はほぼ終わりとなりましたが、椿を題材にした絵画や工芸作品を集めた企画展「椿×名品展 -ふたたび、五浦へ」が、茨城県天心記念五浦美術館(北茨城市大津町)で開催中です。

展示は椿絵のコレクションで知られる、あいおいニッセイ同和損害保険の所蔵品から日本画、洋画、工芸など85点と茨城県近代美術館などの所蔵作品4点を加えた総数89点です。

五浦美術館での「椿絵名作展」は16年ぶりの開催で、今回は椿をテーマにした作品を発表している現代作家・片口直樹の油彩画と、映像作家・横田将士とのコラボレーション作品も展示され、江戸時代から現代までの椿作品が勢ぞろいしているとのことです。

期間:2023年4月29日(土・祝)~6月11日(日)

開館時間:9:30~17:00(入場は16:30まで)、月曜日休館

入場料:一般730(630)円

五浦は大小の入り江や磯、断崖絶壁などの波による浸食で形成された地形が続く景勝地です。日本近代における美術指導者として知られる岡倉天心(帝国博物館(現東京国立博物館)理事・美術部長、東京美術学校(現東京芸術大学)の校長)は、1898年に設立した日本美術院をこの地に移しました。日本美術院では、横山大観や菱田春草などが学び、日本画の創作活動をしました。これを記念して1997年に開館したのが茨城県天心記念五浦美術館です。

今回の展示では日本美術院の著名な画家たちの作品も多数並びます。

また五浦は椿の自生地であり、同館主任学芸主事の木内智美氏は、敷地内、道沿いにも数多くの椿を見ることができ、五浦の名の由来となる5つの入江の1つが「椿磯」で、古くから椿が自生していたことがうかがえる、と話しています。

椿の自生する美術のメッカで椿の作品を見、風光明媚な海岸景色を堪能してくる小旅行も良いかもしれません。

参考:

・茨城県天心記念五浦美術館 公式サイト:https://www.tenshin.museum.ibk.ed.jp/index.html

・東京新聞<いづらだより>(17)五浦に咲く椿の名品:https://www.tokyo-np.co.jp/article/248438

・五浦海岸:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%94%E6%B5%A6%E6%B5%B7%E5%B2%B8

萩の笠山椿群生林の成り立ちと再生事業

前回、笠山群生林について触れましたが、今回は少し詳しく紹介します。

初めて萩の笠山にある椿群生林を見た時、他に類を見ない奇観に圧倒されました。枝葉を付けずに細く伸びた幹ばかりが立ち並ぶ椿の純林。薄暗い樹林で上を見上げれば、陽光を求めた葉がはるか頭上で広がっているのが見えます。まるで幽霊のような木々だと思いました。しかし赤い椿の花々が落ちて地上を赤く染めるのを見る時、これらの木々はすべて逞しく生きていることを強く実感します。ここは人の介入によって、超過密に生きる椿たちが熾烈な生存競争の末に作り出した稀なる景観です。

笠山の歴史と椿群生林の誕生

山口県萩市の笠山は日本海に突き出した半島です。約8000年前に火山島として誕生し、その後陸続きになりました。同じく日本海に突き出た半島の指月山に毛利氏が1600年に築城して以来、城の北東(鬼門)であったことから「御止め山」として、明治になるまで人手が入らずに天然林として残されました。

明治になり入山禁止が解かれると、人々の暮らしを支える里山として利用されるようになります。シイ、カシ、タブなどの大木は用材として、雑木は薪として切り出されました。昭和30年代(1955~65年)まで燃料の薪炭を得る山として機能しますが、その後、ガスや石油が燃料として普及すると薪は不要となり、笠山も放置されるようになります。

転換期は昭和45年(1970)に訪れます。笠山を調査に来た薬学博士で椿研究家の渡邊武氏が、雑木やツタを払い整備して椿の観光名所とすることを市長に提言しました。萩市はそれを受け入れ、雑木の除去や道路拡張、遊歩道の整備などに努め、10ヘクタールの広さに約25,000本のヤブツバキの純林が出来上がったのです。整備を初めて30年くらいたったころには今に近い様子になっていたようです。

花期は12月上旬~3月下旬と長いのですが、例年2月中旬~3月下旬頃が見ごろとなります。基準木(1999から基準木7本を指定)すべてが花をつけたときに椿の開花宣言を行っています。

笠山椿群生林ができるまでの様子(樹木医・草野隆司氏の基調講演スライドより)

笠山群生林の現状

・椿の名所の中でも、他に類を見ない景観として著名。

・観光資源としてツバキの純林を発展させた。70余年経過する中で様々な問題が生じたため、現在、再生事業が実施中。

笠山椿群生林の再生

1970年から椿の観光名所として整備され、椿の純林として育ってきた笠山の椿群生林ですが、それから半世紀以上経ち問題も生じてきました。

・過密状況で光を奪い合い上へ成長した結果、負けた木は枯れる

・生き残った木も樹勢が衰える

・病気の発生

こうした問題を解決して将来にわたって存続させるために、萩市は2019年(令和1年)から椿群生林の再生事業を開始します。条件を変えながら伐採萌芽試験を行い、約2ヘクタールの椿林の更新を計画しています。一方で保存予定地も設けて現状の推移を見守ります。

方法は、区画を決めて地上70cmや2mで一斉に伐採し、切株から萌芽するのを待つというものです。区画を一斉に切り払った場所に切株が林立する様は奇異な感じですが、既に胴から芽吹いている木も多くあります。全国椿サミット萩大会基調講演で樹木医・草野氏による試験伐採の経過報告によると、伐採後年2年以内の萌芽が現状約60%とのことです。


こうした一斉伐採の方法は新上五島町でも行われていました。山の斜面の一面に胴切りされ、萌芽したツバキが立ち並ぶ様子はよく似ています。

一方で同行して見学していた園芸業者や研究者からは、一斉に切るのでなく間引くように切る方がいい、一本の木を一度に胴切りするよりも落とす枝と残す枝を分けて段階的に落とし樹勢を保つ方がいい、などの意見も上がっていました。

伐採萌芽試験はまだ途中で、今後どのように再生してゆくのか興味深いところです。

参考:

・自然の魅力いっぱい!! 笠山・椿群生林,萩市観光課,2022.3

・笠山群生林「再生物語り」2023.3.18

・第33回全国椿サミット萩大会基調講演,樹木医・草野隆司氏,2023

・椿づくし、講談社編、講談社、2005

第33回全国椿サミット萩大会2023

【椿information】2023-4-12

毎年、各地の自治体と日本ツバキ協会が共催で行う全国椿サミット。コロナ過により2019年の御殿場大会を最後に中止が続いていたので今年の萩大会は4年ぶりの開催。萩市での開催は11年ぶり4回目です。感染対策のため人数制限をしての実施でしたが、参加者たちは久々の交友と椿の名所への訪問に笑顔が溢れていました。

第33回全国椿サミット萩大会概要

テーマ:「ヤブ椿の自然林笠山椿群生林の再生を目指して」

日時:2023年3月18日(土)、19日(日)

場所:山口県萩市(萩市民館)

オープニング:越ヶ浜郷土芸能保存会「巫女(みっこ)の舞」、XUXU(シュシュ)ライブ

基調講演:「ヤブ椿の自然林笠山椿群生林の再生を目指して」萩市観光課樹木医草野隆司

展示(小ホール、ロビー):

萩焼と生け花展(萩陶芸家協会から特別提供の萩焼と市内華道団体によるコラボレーション)

椿油搾油の実演(サン製機)、椿グッズの販売

新花人気投票コンテスト(日本ツバキ協会) 

参加者には様々なお土産が渡されます。開催地からは椿の苗木やご当地の名産品など、協賛企業数社も椿油などを提供しています。

大会後の交流会は千春楽というホテルのバンケットで賑々しく行われました。地元の料理を食べながら、旧知の椿友や初対面の椿友と話が弾みます。最後は次回開催地の松江市に引き継がれる大団円で宴は終わりました。

萩の椿名所 笠山椿群生林と東光寺の古木「宮様椿」

19日の視察は、笠山椿群生林(萩・椿まつり会場)、道の駅・萩しーまーと、東光寺、松陰神社の4か所です。

笠山椿群生林:山口県萩市椿東越ケ浜虎ケ崎

萩市の北東部、笠山の北端にあたる虎ヶ崎には約10haに約25,000本のヤブツバキが群生しており、萩市指定天然記念物に指定(2002年/H14)されています。開花期間は12月上旬~3月下旬と長く、例年2月中旬~3月下旬頃に見ごろを迎えます。木の多くは株立ちで、背が高く細い幹が林立する林と、樹上から落ちてきた椿の赤い「落ち椿」が地面を赤く染める様子は他に類のない景観です。

群生林内は遊歩道が整備され散策がしやすく、展望台は地上13mあって椿群生林を上から見渡すことができ、天気が良ければ日本海が一望できます。

東光寺の「宮様つばき」:山口県萩市椿東1647

萩市椿東にある東光寺は元禄4年(1691)藩主毛利吉就が開基となって創建された黄檗宗の寺院で、4件の国指定重要文化財と毛利家墓所を含めた境内が史跡に指定されています。藩主や婦人の墓が並ぶ墓所の手前には家臣らが寄進した500基もの石灯籠が立ち並び、その石燈籠列の右手奥に、「宮様つばき」と呼ばれる古木椿があります。定かではありませんが、9代藩主・毛利成房治親の正室が有栖川宮織仁親王の娘であることから、毛利家と京都有栖川宮家の所縁の木と伝えられています。

この宮様つばきの品種は「紅唐子(べにからこ)」、別名「日光(じっこう)」と呼ばれる江戸期からの古典品種のひとつです。

3月から咲き始め4月上旬まで開花します。雄しべが弁化する唐子咲きと呼ばれる咲き方で、花弁も唐子も濃紅色をした特徴的な花姿です。根周りが1.7m、樹齢は270年ともいわれます。他所の紅唐子と比べて花が大振りなことが印象的でした。

次回の全国椿サミット開催地は、2024年3月9日(土)-10日(日)島根県松江市、2025年は長崎県五島市です。

参考:

・第33回全国椿サミット萩大会パンフレット

・萩観光協会公式サイト:https://www.hagishi.com/

・萩市FB:https://www.facebook.com/1671656896283464/posts/2749441068505036/

・東光寺ガイドによる解説

日本ツバキ協会と国際ツバキ協会(&各地の椿展リスト)

【椿information】2023-3-10

日本だけでなく、世界には、椿の愛好家がたくさんいて、それぞれの地域で同好会を作り活動しています。さらに広く同好家同士が繋がりを持ち交流をするために組織ができています。この「同好家同士が交流する組織」として、日本国内には「日本ツバキ協会(J C S:Japan Camellia Society)」が、日本を含めた世界には「国際ツバキ協会(I C S:International Camellia Society)」という団体があります。

日本ツバキ協会(J C S) https://japancamellia.org/

一般社団法人日本ツバキ協会は、ツバキに関する調査研究、栽培や新種育成の指導・奨励を行い、その成果を国内外に提供してツバキの普及を図り、日本におけるツバキ文化を継承発展させ、その文化を国内外に広く発信することを目的に設立された非営利法人です。

具体的には、椿展や見学会などの開催、新しい品種登録、各地の椿の古木の優良古木認定、会誌の発行、取材への協力、椿に関する広報活動などを行っています。毎年、各地の自治体と共催で行う全国椿サミットはコロナ過下で2019年の御殿場大会を最後に中止が続きましたが、今年は萩で4年ぶりの開催となります。

会員は日本国内に約1300人おり、本部か39支部のいずれかに所属しています。それぞれの支部は、地域に密着した椿同好会として独立した団体である場合(例えば「伊予つばき支部」が地域の「伊予つばき協会」であるように)もあります。

支部や愛好会の中には、自分たちの楽しみや地域の椿文化の活性のために椿展や見学会、セミナーなどを行って活発に活動しているところもあり、特に椿の最盛期である3月は各地で椿展やウオークラリーなどが行われています。後述したので、機会があれば行ってみてください。

国際ツバキ協会(I C S) https://internationalcamellia.org/en-us/

一方、多数の国にまたがる組織であるI C Sは、法律に規定された組織の表記はなく、自らを単に「国際的な非営利団体(charity)」と紹介しています。

会員は世界の28カ国に約1500人。品種登録簿の作成、会誌の発行、優秀ツバキ園の認定、基金を持ちツバキの研究と保全活動に資金を提供しています。そしてアジア、ヨーロッパ、オセアニア、米国のどこかの地域で隔年に会議を開催します。今年は2018年から5年ぶりにイタリアで開かれます。

<各地の椿展・椿まつり(現在開催中・今後開催のもの)

  • 大分県杵築市: 2/18(土)〜3/31(金)/るるぱーく(大分農業文化会館)
  • 福岡県久留米市: 3/4(土)〜3/21(火)/石橋文化センター
  • 福岡県久留米市: 3/4(土)〜3/12(日)/久留米世界のつばき館/第14回久留米つばきフェア
  • 鳥取県松江市: 3/11(土)〜3/12(日)/松江城城山公園/第54回松江城城山公園椿展
  • 山口県山口市: 3/24(金)〜3/26(日)/サンパークあじす/2023山口つばき展
  • 広島県広島市: 3/31(金)〜4/2(日)/妙詠寺/広島支部第11回ツバキ展
  • 愛媛県松山市: 3/6(月)〜3/12(日)/松山城二之丸多聞櫓、史跡庭園/第26回松山城二之丸つばき名花展
  • 愛媛県松山市: 3/16(日)/道後温泉つばき巡りウォーク
  • 京都府京都市: 3/24(金)〜3/26(日)/京都府立植物園/第62回椿展
  • 奈良県奈良市: 3/25(土)〜3/26(日)/奈良県護国神社/奈良県護国神社椿祭り
  • 奈良県奈良市: 3/27(月)〜3/31(金)/奈良薬師寺/奈良薬師寺椿展
  • 愛知県瀬戸市: 3/18(土)〜3/19(日)/凧山つばきの森/瀬戸椿の会つばき展
  • 石川県野々市市: 3/18(土)〜3/19(日)/野々市市文化会館フォルテ・ののいち椿館/花と緑 ののいち 椿まつり2023
  • 富山県南砺市: 3/18(土)〜3/20(月)/いのくち椿館/第33回南砺いのくち椿まつり
  • 富山県高岡市: 3/11(土)〜3/12(日)/おとぎの森/第35回高岡つばき展
  • 静岡県静岡市: 3/11(土)〜3/12(日)/アイセル21/第29回世界の椿展
  • 静岡県御殿場市: 3/25(土)〜3/26(日)/秩父宮記念公園/第11回椿まつり
  • 神奈川県平塚市: 3/30(木)〜4/2(日)/神奈川県立花菜ガーデン/江戸椿研究会展
  • 東京都大島町: 1/29(日)〜3/26(日)/都立大島公園/伊豆大島椿まつり
  • 東京都府中市: 3/14(火)〜3/19(日)/都立神代植物公園/神代椿展
  • 神奈川県横浜市: 3/18(土)〜3/19(日)/こどもの国 椿の森/横浜こどもの国ツバキまつり
  • 埼玉県川口市: 3/4(土)〜3/21(火)/川口グリーンセンター/第46回椿展
  • 茨城県土浦市:3/12(日)/亀城プラザ/土浦椿展
  • 群馬県前橋市: 3/24(金)〜3/26(日)/前橋敷島公園門倉テクノばら園
  • 岩手県大船渡市: 2/5(日)〜3/21(火)/世界の椿館・碁石/三陸・大船渡第26回つばきまつり

参考:

・「椿」61号,日本ツバキ協会,2023

・日本ツバキ協会公式サイト:https://japancamellia.org/

・国際ツバキ協会公式サイト:https://internationalcamellia.org/ja/

伊豆大島の椿まつり2023

【椿information】2023-2-22

今年で第68回を数える伊豆大島椿まつり。

例年、椿の開花時期に合わせて1月末から3月末まで、約2カ月間も開催されます。今年の会期は1月29日(日)から3月26日(日)です。

伊豆大島椿まつり期間中は、島内の各所に自生するヤブツバキ約300万本が開花し、島内にある3つの椿園で様々な園芸品種のツバキの花が楽しめます。来島者の多くは東海汽船が用意する手頃・手軽なパッケージツアーで来島します。観光協会では島内各施設や島民の協力を得ながらイベントを行い盛り上げています。

椿プラザ特設会場:

来島者歓迎イベントは、メイン会場の都立大島公園椿プラザ特設会場で毎日おこなわれます。ステージでは大島のアンコ装束に身を包んだアンコさんによる大島民謡や「アンコの手踊り」などの郷土芸能が披露され、出展ブースでは椿油や明日葉茶などのお土産が購入できます。

椿園:

郷土芸能を見た後はそのまま都立大島公園の椿園を散策して椿の花を楽しめます。国内最大級の広さをもつ園内には、原種と園芸種が約1,000品種、3,200本、自生するヤブツバキが約5,000本あります。椿園は他にも都立大島高校で農林課の生徒たちが管理運営する椿園と、民間の椿花ガーデンがあります。

3つの椿園はいずれも国際ツバキ協会が国際優秀ツバキ園に認定しています。

伊豆大島の国際ツバキ協会が国際優秀ツバキ園・3園

その他に:

祭りを盛り上げるイベントとして初日には伊豆大島の郷土芸能である和太鼓「御神火太鼓」が披露されました。そのほか長い椿まつり期間中には、いくつかの催しも行われます。

・2月3日(金)~3月18日(土)の金・土19:30〜21:00に夜祭(元町港船客待合所内)

・2月25日(土)椿の女王コンテスト(大島公園椿プラザ)

・3月21日(火)~26日(日)椿花ガーデンライトアップ

今年の椿の花に見頃は、2月下旬から3月中旬だそうです。

参考:

第68回伊豆大島椿まつり公式サイト:大島観光協会

http://www.izu-oshima.or.jp/68th_camellia_festival/index.html

PRTimes:第 68 回伊豆大島椿まつり ~メイン会場 大島公園 で楽しもう!~[東海汽船株式会社]:

https://www.jiji.com/jc/article?k=000000224.000007930&g=prt

ホテル椿山荘 椿絵巻 〜東京椿インスタレーション・アート〜

【椿information】2023-2-8

東京都文京区のホテル椿山荘では、今年も 椿絵巻〜東京椿インスタレーション・アート〜が始まりました。

椿山荘は、明治の軍人・政治家であった山縣有朋が購入して作った庭と邸宅である「椿山荘」に由来します。山縣の故郷は現在の山口県萩市で、萩には、人の手によって生み出された椿の純林「笠山椿群生林」があります。その笠山椿群生林をモチーフにしたのが、椿絵巻〜東京椿インスタレーション・アート〜です。開催期間は、2/8(水)~2/28(火)の3週間、笠山を想像しながら歩いてみてはいかがでしょう。

2021/2/27撮影
2021/2/27撮影

ホテル椿山荘まで行けない方は、YouTubeに動画がありますので、こちらをどうぞ。

椿山荘の庭では、1~3月にかけて、約100種2300本の椿が咲きます。もう、少しずつ咲き始めていますので、併せて見学するのがお勧めです。 また萩市では今年、3/18(土)・19(日)に全国椿サミットが開催され、笠山への見学も予定されています。

参考:

・ホテル椿山荘 東京椿:https://hotel-chinzanso-tokyo.jp/tsubaki/

・つらつら椿【椿の名所】ホテル椿山荘と関口台地の椿山:https://tsubaki-fan.com/camellia-trip/hotel-chinzanso-tokyo-tsubaki-yama/

椿の記念日

【椿information】2023-1-25

1月28日は「いい、つばきの日」、愛媛県松山市が制定した椿の記念日です。

「つばき」に愛着を持ち、笑顔が広がることを願って、2018年(平成30年)に制定されました。

伊予は椿どころです。古くから自生しているヤブツバキは松山市の市の花にもなっています。(1972年4月1日制定)毎年1月28日の「いい、つばきの日」から椿が見頃を迎える3月末までの間「つばきフェスティバル」と題して市民参加の様々なイベントが開催されます。その一つに俳人・夏井いつきさんによる句会ライブは、コロナ禍によって2021年からはリモート句会ライブとして行われています。松山は俳人・正岡子規の故郷ですからぴったりなイベントですね。

また松山市の「椿神社」(伊豫豆比古命神社:いよずひこのみことじんじゃ)では、例年、旧暦正月8日を例祭日としてその前後3日間「椿まつり」が行われます。2023年は1月28日(土)~30日(月)の3日間の開催です。

もうひとつ椿の記念日があります。

2月8日の「つばきの日」で、長崎県五島市が制定しました。日本人の生活と文化に密接なつながりを持つ「椿」に焦点を当て、大事に守り育てていく、という思いが込められているそうです。

五島は「東の大島、西の五島」と並び称され、国内有数の椿の自生地として知られる場所です。ヤブツバキが多数自生しており、椿油の生産量も多く、名産の五島うどんにはその椿油が使われています。国際ツバキ協会認定の国際優秀椿園もあります。

2/18(土)~26(日)は第29回五島椿まつりが開催されます。

1月28日の「いい、つばきの日」と、2月8日の「つばきの日」。

それぞれの地元では記念日に合わせて椿の普及活動が盛んです。いずれも「椿のご当地」を自負していることがうかがえます。

こうした記念日をきっかけに多くの人々が椿に目を向けてくれることを幸いと思い、ともに喜び、応援したいものです。

参考:

1月を彩る酒井抱一筆「十二か月花鳥図」の椿

【椿information】2023-1-11

四季の変化が細やかな日本では、春夏秋冬の四季のみならず、24に分けた「二十四節気」、72に分けた「七十二候」などによって自然の移ろいを、鳥、花、気象などの様子で表してきました。

そうした自然の移り変わりを12カ月それぞれの月にふさわしい花や鳥によって彩り、12図をセットにしたのが、酒井抱一(さかいほういつ)筆「十二か月花鳥図」十二幅です。

椿は1月の図に登場します。

1月の題材は、椿、梅、鶯。旧暦の1月は新暦の1月下旬から3月上旬頃にあたるので今よりずっと春めいていますから、1月に、椿、梅、鶯が選ばれたのもしっくりきます。

十二か月花鳥図 1月 酒井抱一/図録「畠山記念館の名品」より

今でも時折、椿は首が落ちて不吉だと思っている方がいますが、もしそうであれば1月の題材になど選ばれなかったはずです。また武士の嗜みであった茶道でも椿は炉の季節の重要な花です。むしろ古来より常世、吉祥の象徴であり、年の初めに相応しい花ではないでしょうか。

作者の酒井抱一は江戸時代後期の江戸琳派を代表する絵師で、「風神雷神図屏風」は誰もが知るところでしょう。花鳥図や草花図を得意とし、晩年の作である「花鳥十二ヶ月図」は人気作であったので、いくつものセットが現存しています。どの月も構図が整い、色合いが美しく、豊かな季節の情緒が感じられます。

図の引用は図録「畠山記念館の名品」から。

畠山記念館は荏原製作所創業者、畠山一清が蒐集した美術品、約1300件を展示する美術館です。収蔵品は、茶道具を中心に書画、陶磁、漆芸、能装束など、日本、中国、朝鮮の古美術品があり、国宝6件、重要文化財33件を含みます。現在は施設改築工事の為長期休館中。

参考:

・特別展 畠山記念館の名品 ―能楽から茶の湯、そして琳派―,日本経済新聞社・NHK京都放送局・NHKエンタープライズ近畿,2021

東京農工大学のサザンカ

【椿information】2022-11-24

11月19日(土)に東京農工大学へサザンカを見に行きました。校内に植えられたサザンカは約200品種、樹齢数十年のものもあります。これらは箱田直紀会長がかつて研究に育てていたもので、今は農工大のシンボル的花木としてキャンパスを彩っています。多くのサザンカは花盛りを迎えていました。

サザンカは木の表側に咲き、花数も多いので華やかです。一方ツバキは葉の下に隠れるように咲くことが多いので、静かな佇まいがあります。同じカメリア属のツバキとサザンカですが、雰囲気はそれぞれですね。

<サザンカの品種を覚えてみましょう>

昭和の栄(しょうわのさかえ)

全国で見られるシシガシラ系のサザンカです。花径は7、8cmですが、紅桃色の花弁には白雲状の白斑が入り、華やかです。時に横杢模様の斑入り花もあり、複雑な色あいで見ごたえがあります。

富士の峰(ふじのみね)

「富士の峰」はとてもポピュラーな品種です。九州に枯木が多く、明治初期に関西から広まったと言われ、「峰の雪」の名で販売されていたこともありました。花弁が30~50枚もある千重咲き、咲き切るとおしべが少し見えてきます。11月中頃から咲き始めます。シシガシラ系。

初音(はつね)

花弁を縁取る紫がかった紅色のぼかしがなんとも美しいこと。10月頃から咲く早咲きの品種で、花径は7、8cmの一重咲きですがなかなか存在感のある一輪です。栄久絞と間違われて販売されていたこともあるそうで、箱田先生の命名です。サザンカ系。

夕陽(せきよう)

肥後サザンカのひとつで、12~15枚の鮮やかな濃紅色の花弁をしていて、時に白い筋が入ります。シシガシラ系。肥後サザンカとは肥後藩の園芸家たちによって生み出された独特の美意識に基づく園芸品種群です。一重平開咲き、梅芯といった特徴があり、庭木や盆栽として仕立てられ、海外でも人気があります。

<東京農工大学のサザンカについてもっと知りたい方へ参考資料>

「東京農工大学のサザンカ」http://www.sato-tsubaki.co.jp/source/C.sasanqua.pdf

<これからあるサザンカ展と観察会>

○国立歴史民俗博物館 くらしの植物苑「冬の華・サザンカ」

https://www.rekihaku.ac.jp/exhibitions/plant/project/next.html

・2022年11月29日(火)~ 2023年1月29日(日)

・日本固有種であるサザンカを鉢植えにて、約140品種、約300鉢を展示

・12月17日(土)13:30~ 箱田直紀氏(日本ツバキ協会会長・恵泉女学園大学名誉教授)による観察会

アンペルギャラリー 椿絵コレクション展のご案内

【椿information】2022-12-1

今年もまた、日本橋のUNPEL GALLERY(アンペルギャラリー)で、あいおいニッセイ同和損保 椿絵コレクション展が開催されます。

ギャラリーの運営母体であるあいおいニッセイ同和損保は、桃山時代から近現代に至るまでの椿をテーマとした絵画・工芸品の一大コレクションを有し、その作品数は約300 点に及びます。著名な作家、有名な作品が数多くあり、中には見たことのある作品もあるでしょう。

ギャラリーなので一室しかない展示ですが、質の良い椿作品が見られます。入場は無料。

ぜひ足を延ばしてみてください。

会期:

パート1 2022年12月3日(土)~25(日)

パート2 2023年1月10日(火)~29(日)

あいおいニッセイ同和損保 アンペルギャラリー