夏の終わり、椿の種子が熟す頃

【椿information】2022-8-25

8月も終わりに近づくと各地で椿の実が熟して収穫期を迎えます。

木の上で熟した実は分厚い外皮が自然に割れて、中から黒くつやつやした種子が顔をのぞかせます。割れ目はたいてい3つくらいで、これはヤブツバキの子房室(しぼうしつ:種子ができるところ)が3つに分かれているからです。さらにそれぞれの子房室の中には種子の元になる胚珠(はいしゅ)が3つあります。つまり、1つの実の中に最大9個の種子ができる計算です。

とはいえ、これは理屈の話で、実際は5~6個くらいのものも多く、中には種子が1つだけの小さな実もあります。

この種子を絞って作るのが椿油です。

黄金色をした椿油は、肌に、髪に、食用にと、様々に使える優れた油脂で、日本各地で古くから使われてきました。

太陽や地味の恵みを受け、数か月かけて育った椿の種子。

私たちは木が半年かけて実らせたこの種子から椿油を頂くのですから、収穫の時期を迎えて感謝の気持ちを忘れたくないものです。

ヤブツバキの実/撮影:yamatsubakisya
ヤブツバキの実/撮影:yamatsubakisya

夏に咲くアザレアツバキ

【椿information】2022-8-14

ご存じのようにツバキは春を盛りに咲く花ですが、中には夏に花が咲くアザレアツバキ(Camellia azalea)もあります。

比較的近年に知られるようになったツバキ属の原種です。日本では7月頃から10月頃に花が見られることが多いようです。学名は、Camellia changii(カメリア チャンギ―)、中国広東省の原産。中国語では張氏紅山茶と書きます。花は紅色、花径6~10cmくらい、花弁は5~9枚。細長い花弁はよく見るとラメでも入っているように光の粒がキラキラして見えます。木の成長はゆっくりで、なかなか大きくなりません。

6、7、8、9月に咲くツバキの園芸品種は少ないので、このアザレアツバキには夏咲ツバキの親としての期待が高まっていています。まだ珍しいツバキですが、以下の椿園などで見られます。

  • 椿花ガーデン(東京都大島町)
  • 都立大島高校椿園(東京都大島町)
  • 久留米市世界のつばき館(福岡県久留米市)
  • るるパーク(大分農業文化公園、杵築市)など。
  • いのくち椿館(富山県南砺市)
アザレアツバキ
アザレアツバキ/撮影:yamatsubakisya

参考文献:

いのくち椿館 原種ツバキ図鑑,桐野秋豊,いのくち椿館,2013