【椿information】2023-1-11
四季の変化が細やかな日本では、春夏秋冬の四季のみならず、24に分けた「二十四節気」、72に分けた「七十二候」などによって自然の移ろいを、鳥、花、気象などの様子で表してきました。
そうした自然の移り変わりを12カ月それぞれの月にふさわしい花や鳥によって彩り、12図をセットにしたのが、酒井抱一(さかいほういつ)筆「十二か月花鳥図」十二幅です。
椿は1月の図に登場します。
1月の題材は、椿、梅、鶯。旧暦の1月は新暦の1月下旬から3月上旬頃にあたるので今よりずっと春めいていますから、1月に、椿、梅、鶯が選ばれたのもしっくりきます。
今でも時折、椿は首が落ちて不吉だと思っている方がいますが、もしそうであれば1月の題材になど選ばれなかったはずです。また武士の嗜みであった茶道でも椿は炉の季節の重要な花です。むしろ古来より常世、吉祥の象徴であり、年の初めに相応しい花ではないでしょうか。
作者の酒井抱一は江戸時代後期の江戸琳派を代表する絵師で、「風神雷神図屏風」は誰もが知るところでしょう。花鳥図や草花図を得意とし、晩年の作である「花鳥十二ヶ月図」は人気作であったので、いくつものセットが現存しています。どの月も構図が整い、色合いが美しく、豊かな季節の情緒が感じられます。
図の引用は図録「畠山記念館の名品」から。
畠山記念館は荏原製作所創業者、畠山一清が蒐集した美術品、約1300件を展示する美術館です。収蔵品は、茶道具を中心に書画、陶磁、漆芸、能装束など、日本、中国、朝鮮の古美術品があり、国宝6件、重要文化財33件を含みます。現在は施設改築工事の為長期休館中。
参考:
・特別展 畠山記念館の名品 ―能楽から茶の湯、そして琳派―,日本経済新聞社・NHK京都放送局・NHKエンタープライズ近畿,2021