松山の春呼ぶ2つの椿展2024

「お椿さん」で知られる伊予松山の伊豫豆比古命神社(いよづひこのみことじんじゃ)で行われる「椿まつり」、今年は2024年2/16(金)~18(日)開催です。

このお祭りに合わせて椿展も開かれます。

更に松山では春たけなわの3月にも椿展があります。

椿処松山の、2月と3月の春を寿ぐ2つの椿展は以下の通りです。

第48回伊予つばき名花展~萬翠荘展~
日時 令和6年2月12日(月)~2月18日(日)
      9:00~17:00(初日は13:00から、最終日は15:00まで)
場所 松山市一番町3丁目3-7 萬翠荘

第27回松山城二之丸つばき名花展
日時 令和6年3月7日(木)~令和6年3月13日(水)
      9:00~16:30(最終日は15:00まで)
場所 松山市丸之内5 松山市二之丸史跡庭園

伊予つばき協会主催椿展ポスター/画像提供:伊予つばき協会

椿カレンダー1月「珍秀錦」、ツバキの白斑

大島椿椿カレンダー1月の珍秀錦は、小ぶりな花ながら複雑に現れた白斑のおかげで華やかな存在感があります。

珍秀錦(ちんしゅうにしき)/撮影:高野末男 (大島椿椿のカレンダー2024より)

珍秀錦(ちんしゅうにしき)

緋紅地に大小の白斑がはいる。一重、ラッパ咲。閉蕊。小輪、花期は春。葉は長楕円、小、鋭尖頭鋭足、ゆるく外曲、小鋸歯。樹形は横張性、樹勢は並。ヤブツバキの選抜で、花は胡蝶侘助を思わせる。久留米産。(『原色日本の椿写真集』より引用)

白斑について

植物に地色の違う文様が現れると「斑入り」と呼びます。花弁や葉に斑が入ると単一色よりも多様な表情となり観賞価値が高まるので園芸的に好まれます。「斑入り」の現象は遺伝子によるものとウイルスによるものがあるとされています。

珍秀錦のように、赤い花弁に不規則な形で現れる白い斑入りを「白斑(はくはん)」といい、ウイルスが要因だと考えられてます。このウイルスはツバキに重篤な健康被害を与えない一方、園芸的な魅力を増すものとして受け入れられています。

白斑は花弁の赤い地色が白く抜けた状態で、赤地との境目は不鮮明です。形は小さな丸や大きく丸みをおびた形、不定形な形などパターンがあります。大きさや形によって、「白星斑(星斑)」や「雲状斑(うんじょうはん)」などと呼びますが明確な定義はないようです。特に「横杢斑(よこもくはん)」と呼ぶ模様は、材木の板目模様や年輪のようにギザギザと波打つ模様をしています。

白斑の形は一種類だけ現れたり組み合わせで現れたりします。品種によって現れ方に特徴があるものもあり、花型や地の色と相まってその品種の魅力をつくりだす大切な要素になっています。また、赤一色の「明石潟」と白班のある「大虹」のように、白斑の有無で品種名が異なるツバキもあります。

白斑が魅力的なツバキの例

天ヶ下(あまがした)

荒獅子(あらじし)

正義(まさよし)

蜀江(しょっこう)

月の輪

大虹(おおにじ)

引用・参考:

大島椿椿のカレンダー2024

原色日本の椿写真集,ガーデンライフ編集部,誠文堂新光社,1980

斑入り植物のはなし,笠原基地治,斑入り植物友の会,2008

椿カレンダー製作

多彩で美しい園芸品種が豊富な椿をカレンダーにして、毎月違った椿の魅力を楽しめる美しい写真カレンダーです。写真は日本ツバキ協会理事で長年、椿を撮影し続けていらっしゃる高野末男氏によります。

椿油専門メーカー・大島椿グループがお世話になった方々へお配りする非売品です。

美しい椿の花と、和のイメージにとらわれないデザインは室内の彩りとしてなじみます。

毎年、椿愛好者だけでなく多くの方々に喜ばれています。

大島椿 椿のカレンダー2024

2022年から大島椿ではオリジナル椿カレンダーを制作しています。椿の写真は日本ツバキ協会の理事で椿の写真を長年撮り続けている高野末男氏からお借りしたもの。美しい椿の写真は毎年多くの方にご好評で、2024年カレンダーもたいへん喜ばれています。

カレンダーの1枚目は、「大島椿は、『椿守カンパニー』」というコピーと伊豆大島つばき座への思いがつづられ、つばき座の写真ではじまります。椿油専門メーカ・大島椿が、椿と椿油から生まれ育まれてきた文化を後世に受け継いでゆく「椿守」の活動は、創業当時から現在に至るまで、更には未来へと続く「思い」と「行動」です。

山椿舎では2020年からこの椿のカレンダーを制作しています。

多彩で美しい椿のカレンダーを通じて椿の文化や魅力を伝えられたら幸いです。

椿絵コレクション名品選「百歳万彩」

【椿information】2023-11-28

今年もあいおいニッセイ同和損保の椿絵コレクション展の時期になりました。

場所:東京駅から近い日本橋のUNPEL GALLERY(アンペルギャラリー)

日程:2023年12月2日(土)~24日(日)

無料

今回は「百歳万彩」と銘打って、100歳を超えても絵を描き続けた「健康長寿」の画家の作品が展示されます。

タイトルにある、奥村土牛は101歳、小倉遊亀は105歳、堀文子は100歳まで生きた長寿画家たち。いずれも多くの作品を残して、その絵を見たことがない人はいないでしょう。

<3人の画家について>

奥村土牛(おくむらとぎゅう)

1889年-1990年、101歳。現代日本の代表的な日本画家の一人。本名は奥村義三(おくむらよしぞう)。画号の「土牛」は、出版社を営んでいた父が寒山詩の一節「土牛石田を耕す」から引用してつけられた。多くの富士山を多く描いた作品や、渦潮を描いた「鳴門」が有名。

小倉 遊亀(おぐらゆき)

1895年-2000年、105歳。日本を代表する女性画家の一人。本名はゆき。。女性初の日本美術院同人。代表作は「浴女」や「径(こみち)」など。椿に関しては華やかで色彩豊かな作品が目に留まります。

堀 文子(ほりふみこ)

1918年-2019年、100歳で没。日本画家。花や鳥をモチーフとする作品が多く「花の画家」と呼ばれた。専門の日本画の他に装幀、随筆なども多くあります。

椿については「太神楽」という品種に思い入れがあり、コレクションの絵の中でも描かれています。

参考・引用:

アンペルギャラリーHP  https://unpel.gallery/

サザンカ・ツバキのシーズン到来! 実際に見に行ってみましょう!

【椿information】2023-11-9

街中を歩くとお寺や住宅街のお庭、公園に、サザンカが咲き始めています。サザンカ、ツバキのシーズン到来です。通勤中や散歩しながら、身近かな花を見つけてみてください。

サザンカやツバキが見られる場所、植物展や絵画展をいくつかご紹介します。

<東京都>

都立神代植物園 つばき・さざんか園

10月頃からサザンカが咲き始め、3月〜4月はツバキが最盛期。調布市深大寺元町5-31-10

※秋から春にかけてサザンカとツバキが咲き乱れる。花付きが良く、木に近寄って見られるのが魅力。

亀戸中央公園 サザンカ園

11月~3月頃がサザンカの見頃。東京都江東区亀戸8、9丁目

※江東区の区の花がサザンカ。約50品種、約4,000本が植えられています。

東京農工大学農学部 サザンカ並木

サザンカ約300種が10月~2月に見頃。東京都府中市晴見町3-8-1

※多種多様な大きなサザンカが見られる。

伊豆大島都立大島公園 ツバキ園(国際優秀椿園)

ツバキ・サザンカ約100種・3200本、11月~3月下旬に見頃。東京都大島町泉津字福重2

※広大さ、コレクション数は随一の椿園。一部にサザンカあり。

町田市フォトサロン 第71回ツバキ展

2023年12月2日(土)、3日(日)。東京都町田市野津田町3272 薬師池公園内

※会場のある薬師池公園の椿園では、秋咲き、早咲きの椿が見られます。

速水御舟《名樹散椿》山種美術館HPより 

速水御舟《名樹散椿》【重要文化財】

2023年9月30日(土)~年11月68日(日)

東京都渋谷区広尾 3-12-36

※現在開催中の山種美術館

「日本画聖地巡礼―東山魁夷の京都、奥村

土牛の鳴門―追体験する傑作誕生の地、

発見する画家の心」で実物が見られます。

必見の椿の名画!

<千葉県>

国立歴史民俗博物館 くらしの植物苑「冬の華・サザンカ」展

2023年11月28日(火)~2024年1月28日(日)。千葉県佐倉市城内町 117

<埼玉県>

慈光寺浄土院念仏堂のサザンカ

10月から11月にかけて開花。埼玉県比企郡ときがわ町大字西平386

※樹高約10m、幹囲約5m(幹は4本)、樹齢推定約450年、国内でも屈指のサザンカの木

国営武蔵丘陵森林公園

ツバキ・サザンカ約 850種が11月~4月に見頃。埼玉県比企郡滑川町山田1920

※広大な園内に多くのツバキ・サザンカ。秋はカエデ園の紅葉も見事。

<佐賀県>

千石山のサザンカ自生林(自生北限地帯・国天然記念物)

10月中旬から11月中旬。佐賀県神埼郡吉野ヶ里町松隈地内(道の駅吉野ヶ里近く)

※開花時期、山が花で白く彩られる様子は圧巻です。

<山口県>

教善寺のサザンカ(山口県指定天然記念物)

10月下旬から12月中旬にかけて開花期。山口県宇部市大字西万倉1244番地

※樹高約13m、目通り幹囲約2.3m、樹齢推定約450年、国内でも屈指のサザンカの木。

茶花の椿

【椿information】2023-10-25 茶花の椿

茶道では11月から炉の季節です。「炉(ろ)」はお茶をたてるためのお湯を沸かす囲炉裏のこと。5~10月頃の夏季は畳の上に風炉を置き、11月~4月の冬季には畳に切ってしつらえた炉で茶を立てます。旧暦10月、現在の11月頃の最初の亥の日に畳の下にしまった炉を開けることを炉開きと言います。炉開きは茶人の正月ともいわれる厳かで特別な行事だといいます。

椿は炉開きの前からも茶席で使われますが、やはりよく用いられるのは炉の時期です。花の少ないこの時期に咲く椿は重宝です。炉開きの茶席では初嵐(はつあらし)などの品種が登場します。

茶席では咲ききった華やかな花姿の椿は見られません。開ききらない侘助、咲きかけの小ぶりな一重、ふっくら丸く咲きかけの蕾などの姿で飾られます。葉も色形が美しいものが好まれます。

茶花と特にいわれる時は単に花の種類だけでなく、活ける瓶、籠、筒などの入れ物との取り合わせが意識されています。花と器が似合ったものであることが美しさになるからなのでしょう。こうした独特の美意識の中で求められ、育まれた茶花としての椿は、園芸とは異なる存在感を放っています。

茶花に用いられる椿には、白玉椿、臘月、侘助、加茂本阿弥、西王母、太神楽、曙、卜伴、太郎庵などがあります。

今ほど園芸品種が多くなかった江戸時代以前でも茶席で椿が用いられことが茶会記などの記録から伝わっています。例えば、天文18年(1549)1月7日に池永三郎兵衛が梅と松と共に用いました。その後も、白玉椿、うすいろ椿、わびすけ椿、などの名が見られます。白玉椿は品種名というより、すぐれて美しいもの、立派なものを意味する「玉」を白椿に付けて「白く美しい椿」といった感じです。うすいろ椿は赤い藪椿に対して色が薄い色の椿、もしくは薄い紫色を指すと思われます。

初嵐 薬師池公園20211205

参考:

  • 茶席の花 椿と侘助,桐野秋豊,文化出版局,1986
  • お茶人の友1 茶花図鑑 炉編,世界文化社編,世界文化社,1994
  • 茶席の花 椿をいける 百種百様,永井宗圭,淡交社,2004

ボタニカルアートのツバキ

【椿information】2023-9-27

NHKの『らんまん』を見ていた方は牧野が描く植物画の精密さに驚いたと思います。写真がない時代に植物の姿を正確に伝えるには植物画に頼るしかありません。牧野富太郎が作った図鑑に載るのももちろん挿絵です。最近の図鑑は写真が主流ですが、実物を見て同定する時、実は写真よりも精密で特徴をとらえた植物画の方が分りやすいこともあります。

ツバキを世界で初めての植物学的に描いた図は、江戸時代に来日したケンペルの『廻国奇観』にあります。リンネは実物のツバキを見ることなくこの図を基に学名を付けました。それだけ優れた植物画は、学問を支える大切な一部なのです。

精密に正確に描かれた植物画は美しく味わい深い絵画にまで発展して「ボタニカルアート」になりました。ボタニカルアートは植物学(BOTANY)における視覚資料であり、同時に絵画(ART)でもあります。

今年の5月に椿のボタニカルアートの本『ベトナムのツバキとポリスポラ』が出版されました。画家の角田葉子さんはこれまで数多くのツバキの植物画を描いています。

ベトナムツバキの調査にも同行していて、この本はその探索の成果でもあります。その植物の有りようをわかりやすく正しく伝える美しくて精密な線、実物の質感すら伝える着色、部位を絶妙に配置した紙面。さらにこの本では発見したツバキの解説が日本語(箱田直紀博士)と英語(Dr.Tran Ninh)でついていて、見応え読み応えのある1冊となっています。大島椿椿図書館に蔵書がありますのでじっくりご覧ください。

ベトナムのツバキとポリスポラ表紙 角田葉子

芸術の秋です。せっかくなので実物の植物画に触れてその魅力を堪能してはいかがでしょうか。近々開催されるボタニカルアート展をお知らせします。角田葉子さんも椿の植物画を出展しています。「アザレアツバキ」と江戸椿の「紅千鳥」です。

第53回ボタニカルアート展

日時:2023年10月9日(月・祝)~14日(土)10:30~18:00(最終日~15:00)

場所:ギャラリー・ムサシ 東京都中央区銀座1丁目9-1 K・Iビル

引用・参考:

ベトナムのツバキとポリスポラ、角田葉子、日本園芸協会、2023

第53回ボタニカルアート展案内状

椿の実の収穫

【椿information】2023-9-14

今年もまた椿の実の収穫と搾油の時期になりました。大きく育った木から実を収穫するのは大変で、手の届かない実を脚立に登って採ったり、高枝切りバサミを使って枝ごと切って採ります。

高枝切りバサミのなかった時代はどうしていたかというと、木に登って採っていました。または下草をきれいに払ってから地面に筵や布を敷き、その上に木から実を振り落したり、棒で引っかけて落してから拾いました。収穫の頃合いは、実の中が黒くなってちょっと割れてきたころを見計らうのだそうです。

下の絵は1933年に清水柳太という画家が描いた『大島風俗』という伊豆大島の風俗を描いた絵巻物の中の絵です。木に登るのは女性達ばかり。みな笑顔です。絵には「椿の実を採りながらアンコたちは朗らかな聲で唄う」と添え書きしてあります。採った実は頭や腰に付けた小さな籠に入れました。

かつての大島では椿油作りは女性の仕事でした。重労働ですがよい現金収入になります。「だから奥さんの方がお金持ちだったのよ」と島の女性は笑って教えてくれました。椿油作りは女性の仕事ではなくなりましたが、明るくたくましい大島の女性は今でも健在です。

『大島風俗』清水柳太(伊豆大島文化情報館・藤井工房所蔵)

参考文献

・大島風俗、清水柳太、1933、伊豆大島文化情報館・藤井工房(旧「伊豆大島木村五郎・農民美術館)所蔵

イタリアのツバキ(その3)

背の高く、大きく育つ海外の椿たち

日本の庭園で見かける椿の多くは、選定してそこそこの大きさに保たれます。一方で海外の椿はほとんど剪定されていません。基本的に選定せずに放置して、木が伸びたいように育てています。これは庭が広いからなのか、貴重な木なので切らないのか、そもそも剪定の概念がないのかもしれません。生垣や壁を覆う装飾にされる場合も、とにかく大きく仕立てられます。

ヴィラ・ターラントの植物園(Botanic Gardens of Villa Taranto)で見た椿は、丸く刈り込まれていましたが、日本では見られないくらい背が高いものでした。木や人と比べてみると分かると思います。

ヴィラ・カルロッタ(Villa Carlotta )の中庭は通路に沿って背の高い生垣があり、ツバキも多く使われています。邸宅裏手の生垣も邸宅と同じくらいの高さにまで茂っていました。

 

広い庭で大きく枝を広げ、のびのび育つ海外のツバキ。ヨーロッパに渡った椿は広大な庭を彩る植物として重宝されたことでしょう。ツバキ自身も日本とは違う国の庭で、その土地の人間たちの要望に応えて大きく育っているようです。