【椿information】2024-3-27
胡蝶侘助(こちょうわびすけ)
花:桃紅色地に白斑、一重、猪口咲き、極小輪、花期は3~4月。成木は同株で大小の花が咲く。葉:長楕円形、中形。樹:横張性、伸びは悪い。来歴:ワビスケツバキ。江戸前期の「草木写生」(1660)の社製図が最も古く、当時から人気種。(「最新日本ツバキ図鑑」)
侘助と呼ばれるツバキの中ではもっとも古くからある品種で、長らく「侘助」といえばこの花のことを指していました。1972年の『現代椿集』や1975年の『日本椿集』でも表題は「侘助」の名で載っており「胡蝶侘助」「小蝶侘助」の名が添えてあります。来歴はわかっていません。
古くからある品種ということで各地に古木があります。特に京都の金閣寺(鹿苑寺)の古木は有名で、地際で2つに分かれて幹周り140cmもあり、後水尾天皇(1596-1680)お手植えと伝わります。かつて大徳寺総見院(そうけんいん)には、秀吉が利休から譲り受けたという「胡蝶侘助」の古木椿がありました。幹周り170cm、推定樹齢340年という堂々たる古木でしたが1995~6年頃に枯死しました。(色分け花図鑑)
花を見ると、雌しべがつんと立っていて雄しべが短く退化していることが目を引きます。老木になると枝変わりが多く出て、花の大きさに大小でたり、雄しべの状態が黄色く花粉が見られるものや全く退化したものなど様々です。
花色は、桃紅色地(最新日本ツバキ図鑑)、赤紅地(日本椿集)、紅地(現代椿集)と記載にやや幅があります。
実際の花を見ると、白斑の入り方が大きかったり少なかったり、紅色が濃く見えたりやや薄く見えたりと、花ごとに差があって、自分好みの色形の一輪を探すのが楽しくなるツバキです。
ワビスケツバキと侘芯ツバキ
一般的に花が小さく雄しべが退化したタイプの椿は侘助と呼ばれます。しかし雄しべが退化したタイプには2つの系統があるのです。
ワビスケツバキ:
胡蝶侘助をはじめとする「ワビスケ」は「太郎冠者」という品種の子孫とされます。太郎冠者は中国産ツバキの遺伝子を持つツバキと考えられており、花の付け根の子房(種子になる部分)に毛が生えています。これは日本のツバキにはない特徴なので海外産のツバキの遺伝子が入っていることが分ります。
侘芯ツバキ:
一方でヤブツバキの中でも突然変異によって時折、花が小さくて雄しべが退化した花が見られます。この場合、子房にはヤブツバキと同様に毛は生えていません。
同じ様に花が小さく雄しべが退化したタイプのツバキでも、「太郎冠者」の子孫は「ワビスケツバキ」と呼び、ヤブツバキの突然変異の品種は「侘芯ツバキ」と呼びます。由来によって区別されているのです。
引用・参考:
- 大島椿椿のカレンダー2024
- 最新日本ツバキ図鑑,日本ツバキ協会編,誠文堂新光社,2010
- 色分け花図鑑 椿,桐野秋豊,学研,2005
- 現代椿集,日本ツバキ協会,講談社,1972