炉開きというツバキ

【椿information】2022-9-27

残暑の9月も椿ファンにとっては椿の季節の始まり。その先駆けの一つが「炉開き」です。

茶道では11月になると風炉に代わって囲炉裏を開けて、火を入れ釜を掛けます。この行事が「炉開き」で、この日から炉の季節が始まります。「茶人の正月」とも称される大事な行事である炉開き、その名を戴く品種がこの「炉開き」です。

椿の品種「炉開き」の花は、淡桃~桃色、一重、平開咲き、茶しべ、極小輪。9~4月頃咲く。葉は、長楕円形、小形。樹形は叢性、樹勢は強く、枝葉は密生。産地は新潟。

椿は11月から4月の炉の季節に茶席を最も飾る花です。しかし用いられるのは太神楽や白玉椿、太郎庵などのつぼみや、咲き初めの侘助などです。「炉開き」は見たことがありません。名のみばかりとは切ないですが、炉の季節を通じて咲いて見守る役割なのでしょうか。

「炉開き」は従来ユキツバキとチャの自然雑種と言われてきました。2003年にDNAマーカーによる解析の結果からヤブツバキが種子親でチャが花粉親という説も発表されています。どちらが正しいのか? 

いずれにせよ一方の起源がチャであろうことは、花の様子や枝葉の様子からもうなずけます。

炉開き 

参考文献:

・お茶の友1 茶花の図鑑 炉編, 世界文化社編, 世界文化社, 1985

・茶席の花 椿と侘助, 桐野秋豊, 文化出版局, 1986・決定版 茶席の花 椿をいける 百種百様, 永井宗圭, 淡交社, 2004