椿カレンダー2月「江戸錦」と「蝦夷錦」

【椿information】2024-2-22

大島椿で作成した椿カレンダーの2月は「江戸錦」です。

江戸錦(えどにしき)/撮影:高野末男

江戸錦(えどにしき)

花:白地に紅色の縦絞り、八重、筒しべ、中輪、花期は3~4月。葉:楕円形の中形。樹:立性。来歴:1868年「年内草花名寄」に記載がある。桃地に白覆輪を覆輪江戸錦という。(『最新日本ツバキ図鑑』)

江戸錦と似る蝦夷錦を見くらべる

ツバキは見た目が似た花、名前が似た花などがたくさんあって混乱します。2月のカレンダーの花である江戸錦(えどにしき)には似た名前と花容の蝦夷錦(えぞにしき)という花があります。いずれも江戸期からある品種で、名前「錦」と入っています。

「錦」とは、数種の色糸で地織りと文様を織り出した豪華な織物で、奈良時代に中国から入ってきました。華やかな物、高価なものの意味でも使われます。

蝦夷錦はもともと清朝の華麗な錦の官服のことです。江戸時代に松前藩がアイヌ民族を仲介して入手したことからそう呼びました。アイヌ民族はアムール川下流域から来航する民族からこれを購入して松前藩に提供しましたが、鎖国下のこと、松前藩はその事実は伏せ敢えて「蝦夷」と呼びました。

ツバキの蝦夷錦は白から淡桃色地に濃紅色の絞りが入った大輪の花です。官服の華やかさになぞらえて名づけられたのでしょう。ツバキの蝦夷錦は次のような花です。

蝦夷錦(えぞにしき)

蝦夷錦20240211

花:白~淡桃色地に濃紅色の縦~小絞り、八重、筒しべ、大輪、花期は3~4月。葉:長楕円、中形、大きく波曲。樹:立性、強い。来歴:1859年の「椿伊呂波名寄色附」に載る、成木になると花色の変化した枝が生じやすい。(『最新日本ツバキ図鑑』)

同じ木でも枝によって白花や赤花も咲きます。シーボルトはトライカラー(tricolor)と名付けて、帰国時に持ち帰りました。

名前が似ている江戸錦と蝦夷錦、見比べてみると少し違いが分かります。

江戸錦と蝦夷錦に直接の関連性はありません。

「錦」と付く椿はほかにも「唐錦」「京錦」「蜀光錦」「白露錦」「肥後日本錦(ひごやまとにしき)」「綴錦」などあり、多くが絞りの花です。

引用・参考:

最新日本ツバキ図鑑、日本ツバキ協会編、誠文堂新光社、2010

精選版 日本国語大辞典、コトバンク

椿カレンダー1月「珍秀錦」、ツバキの白斑

大島椿椿カレンダー1月の珍秀錦は、小ぶりな花ながら複雑に現れた白斑のおかげで華やかな存在感があります。

珍秀錦(ちんしゅうにしき)/撮影:高野末男

珍秀錦(ちんしゅうにしき)

緋紅地に大小の白斑がはいる。一重、ラッパ咲。閉蕊。小輪、花期は春。葉は長楕円、小、鋭尖頭鋭足、ゆるく外曲、小鋸歯。樹形は横張性、樹勢は並。ヤブツバキの選抜で、花は胡蝶侘助を思わせる。久留米産。(『原色日本の椿写真集』より引用)

白斑について

植物に地色の違う文様が現れると「斑入り」と呼びます。花弁や葉に斑が入ると単一色よりも多様な表情となり観賞価値が高まるので園芸的に好まれます。「斑入り」の現象は遺伝子によるものとウイルスによるものがあるとされています。

珍秀錦のように、赤い花弁に不規則な形で現れる白い斑入りを「白斑(はくはん)」といい、ウイルスが要因だと考えられてます。このウイルスはツバキに重篤な健康被害を与えない一方、園芸的な魅力を増すものとして受け入れられています。

白斑は花弁の赤い地色が白く抜けた状態で、赤地との境目は不鮮明です。形は小さな丸や大きく丸みをおびた形、不定形な形などパターンがあります。大きさや形によって、「白星斑(星斑)」や「雲状斑(うんじょうはん)」などと呼びますが明確な定義はないようです。特に「横杢斑(よこもくはん)」と呼ぶ模様は、材木の板目模様や年輪のようにギザギザと波打つ模様をしています。

白斑の形は一種類だけ現れたり組み合わせで現れたりします。品種によって現れ方に特徴があるものもあり、花型や地の色と相まってその品種の魅力をつくりだす大切な要素になっています。また、赤一色の「明石潟」と白班のある「大虹」のように、白斑の有無で品種名が異なるツバキもあります。

白斑が魅力的なツバキの例

天ヶ下(あまがした)

荒獅子(あらじし)

正義(まさよし)

蜀江(しょっこう)

月の輪

大虹(おおにじ)

引用・参考:

原色日本の椿写真集,ガーデンライフ編集部,誠文堂新光社,1980

斑入り植物のはなし,笠原基地治,斑入り植物友の会,2008

椿カレンダー製作

多彩で美しい園芸品種が豊富な椿をカレンダーにして、毎月違った椿の魅力を楽しめる美しい写真カレンダーです。写真は日本ツバキ協会理事で長年、椿を撮影し続けていらっしゃる高野末男氏によります。

椿油専門メーカー・大島椿グループがお世話になった方々へお配りする非売品です。

美しい椿の花と、和のイメージにとらわれないデザインは室内の彩りとしてなじみます。

毎年、椿愛好者だけでなく多くの方々に喜ばれています。

大島椿 椿のカレンダー2024

2022年から大島椿ではオリジナル椿カレンダーを制作しています。椿の写真は日本ツバキ協会の理事で椿の写真を長年撮り続けている高野末男氏からお借りしたもの。美しい椿の写真は毎年多くの方にご好評で、2024年カレンダーもたいへん喜ばれています。

カレンダーの1枚目は、「大島椿は、『椿守カンパニー』」というコピーと伊豆大島つばき座への思いがつづられ、つばき座の写真ではじまります。椿油専門メーカ・大島椿が、椿と椿油から生まれ育まれてきた文化を後世に受け継いでゆく「椿守」の活動は、創業当時から現在に至るまで、更には未来へと続く「思い」と「行動」です。

山椿舎では2020年からこの椿のカレンダーを制作しています。

多彩で美しい椿のカレンダーを通じて椿の文化や魅力を伝えられたら幸いです。