日本で発展した椿文化
椿は日本の固有植物として広く分布しています。常緑の艶葉は山野を緑にし、真紅の花は冬枯れの景色に明るく灯ります。
身近な存在である椿は、古くから有用植物として人々のくらしに深く関わってきました。実から取れる椿油は食用、灯用、そして髪や肌につけると健やかに保ちます。緻密で堅い材は工芸品や道具、高級な炭になります。枝葉から作る灰は草木染めで美しい紫色を生み出します。海岸などの強風地帯では、椿を植えて風よけ、火伏せとして家や畑を守ってきました。
椿は地域の人々の暮らしや文化に密着した存在です。
精神文化面でも椿は私たちに大きな影響を与えてきました。
古代において、椿の幅広く艶やかな常緑の葉は天皇を寿ぐ言葉でした。中世以降、茶の湯に欠かせない花として発展し、やがて品種改良が進んで園芸の華となり、江戸期には天皇や将軍から一般市民までを熱狂させて園芸ブームを巻き起こしました。美しく多様な花はさまざまな図録や絵画を生み出し、工芸品や服飾品には椿文のモチーフが用いられました。昭和期には再び椿の園芸ブームが到来し庭々を飾ることになります。
椿の文化は長い歴史の中で生まれ、育まれ、受け継がれてきました。
地域の椿の文化を守り育てるお手伝い
このような椿の文化は他の国にはない日本の文化です。
そして日本各地でも、それぞれの地域特性や歴史によって独特の椿の文化が生まれました。
地域に根ざした椿文化は、その地域だけの貴重な文化財産です。
その重要性に気づいて大切にしようという取り組みが各地でなされています。地道な努力と熱意と専門性を以て取り組むことでうまくゆくこともあれば、さまざまな問題に直面して苦慮を強いられる場合もあります。
椿による地域活性活動は、一過性のイベントで盛り上げるだけでなく、その地域に根付く椿文化を掘り起こし、住民自らが関わりを持ち、楽しみ、地域資源である椿の恩恵を感じて豊かになることが大切です。
そこには文化、教育、観光などの様々な要素が複雑に絡み合います。広範囲で時間のかかる取り組みです。
山椿舎の仕事は、こうした課題への取り組みのお手伝いをすることです。 それぞれの土地の椿文化を大切にし、豊かな椿文化を次の世代に伝える一助になりたいと考えています。