白玉(しらたま)
花:白、一重、やや抱え性の筒咲き、筒しべ、蕾が丸いのが特徴、小輪。花期は10~3月。葉:丸みのある楕円、中形。樹:立性、強い。来歴:江戸期からの古典品種、京都の名椿のひとつ、別名:初嵐白玉。(最新日本ツバキ図鑑)
「白玉」と呼ばれる椿
元来、白い一重の椿を美称して白玉と呼んだので、特定の品種を指したものではありませんでした。それが花屋で切り花として売られる時に「白玉」と呼ばれたり、特定の木から切り出した花を「○○白玉」などと区別したりすることで多くの「白玉」が世に生まれました。
日本が椿との付き合いが長い故、園芸の歴史が古い故のことであり、どれが本物か偽物かという話ではないのだと思います。
ただ品種同定するうえで不都合なので、徐々に整理されてゆきました。現在は日本ツバキ協会による『最新日本ツバキ図鑑』に準じることが主流になっています。
さまざまな白玉椿
植木屋では一重の白の実生花を俗に「藪白」と呼び、販売名を「白玉」とするそうです。
切花生産者は花型、葉形が美しく切り花に適した白玉椿を育てて、「白玉」の名で切り花として出荷しました。そこから考えると白玉と呼ばれる椿は存外多いようです。
白玉と呼ばれた代表格として現在の品種名で「初嵐」という品種があります。早咲きで端正な一重の白い椿で、蕾や咲き初めにほんのり桃色を帯びています。一番わかりやすい違いは、「白玉」の蕾は丸く、「初嵐」の蕾の先は尖っています。
ほかの白玉椿と類似点が多くとも独自の美しさがあったので「初嵐」は品種として独立して今も愛される名花となったのでしょう。
その他に白玉として知られる椿をいくつか紹介します。
・本白玉(ほんじろたま):花は白一重、広いラッパ咲き、ヤブツバキより大型。葉も花も整っているが、枝の伸びが遅く切り花に適さない。皆川治助が実生で選出。(日本椿集)
・赤山白玉(あかやましらたま):安行あたりで出た初嵐の実生品種と思われる。枝の伸長が初嵐に勝り、活花として持ちが良く、早咲き。花形はやや劣り、蕾はいびつな丸形。(日本椿集)
・葛西白玉(かさいしらたま):花は純白一重、椀型で大きく、蕾は細長い。(日本椿集) 「現代椿集」では花はややクリーム色が買った白一重の中輪、母樹は江東区葛西にあるとある。
・角葉白玉(かくはしらたま):臘月の東京名。臘月:純白一重、花弁は広大で弁端に小波状のた縦皺がでる。極早咲き、葉は大型。名古屋地方では「盆白玉」の別名。(日本椿集)
・盆白玉(ぼんしらたま):臘月の名古屋地方での呼び名。
・霊鑑寺白玉(れいかんじしらたま)
・『椿伊呂波名寄色付』(1859)の「白玉(はくたま)」:白三四重大輪割しべ。(現代椿集)
・『椿伊呂波名寄色付』(1859)の「志ら玉(しらたま)」:本白一重筒しべ早咲。(現代椿集)
白玉に込められた思い
蕾が玉のように丸く愛らしい玉椿。この場合の玉(たま)は丸い形状の意味合いでしょう。玉は「ぎょく」、宝石の意味があります。白玉は白い宝石の意味であり、真珠の古い呼び名でもあります。
玉(ぎょく)には「すぐれて美しいもの。りっぱなもの」という意味もあります。「玉椿」という言葉がありますが、これはもちろん「美しい椿」の意味です。
白く丸い蕾をつける椿だからと単に丸い形状を示すなら「白丸」で良かったでしょう。「白玉」という字を当てたのは、白い椿が、美しくて価値がある、好ましい、めでたい、といった気持ちを抱かせたからだと思います。
引用・参考:
大島椿椿のカレンダー2024
最新日本ツバキ図鑑,日本ツバキ協会編,誠文堂新光社,2010
日本椿集,津山尚、二口善雄,平凡社,1975年
現代椿集,日本ツバキ協会,講談社,1972
コトバンク https://kotobank.jp/