第54回日本ボタニカルアート展が2024年10月14日(月)~19日(土)開催です。
椿の作品を多く描いている角田葉子さんの作品も展示されます。
お近くに行かれる方は是非お立ち寄りください。
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第54回日本ボタニカルアート展が2024年10月14日(月)~19日(土)開催です。
椿の作品を多く描いている角田葉子さんの作品も展示されます。
お近くに行かれる方は是非お立ち寄りください。
覆輪一休(ふくりんいっきゅう)
覆輪一休/撮影:高野末男
花:淡桃色地に紅色の縦絞りと白覆輪、八重、蓮華咲き、小輪。花期は4月。葉:長楕円、披針形、小形、黄緑色の覆輪葉。樹:立性、強い。来歴:小紅葉の枝変わり。1859年の「椿伊呂波名寄色附」に載る。(最新日本ツバキ図鑑)
葉の模様
「覆輪」と聞くと、「玉之浦」に代表される覆輪花のことがまず思い浮かびます。覆輪一休の花も淡桃色地に紅色の縦絞りに白覆輪が入っていますが、葉も覆輪というところに注目してください。
ツバキの葉には、色が薄くなった部分が現れる斑入りの現象が生じることがあり、これを「錦葉(にしきば)」と呼びます。斑入り模様の現れた方によって、覆輪、掃き込み斑、散り斑などと細かく呼び分けられることもあり、覆輪葉もその一つです。
常緑樹であるツバキは葉も鑑賞の対象です。葉の形、色、大きさ、花とのバランス、そして模様など、葉の面白さや美しさは花期以外でも楽しめるので、品種の人気を左右する要素となります。
覆輪一休の葉はやや細長く、濃い緑に黄緑色が葉を縁取るように入ります。椿研究家の桐野秋豊氏は「細くなった錦葉と花はよく似合う」とおっしゃっていました。
引用・参考:
最新日本ツバキ図鑑、日本ツバキ協会編、誠文堂新光社、2010
日本のツバキ ふるさとと品種、桐野秋豊、淡交社、1976
コトバンク 世界大百科事典(旧版)【ツバキ(椿)】より、平凡社
常緑樹であるツバキは葉も重要な鑑賞の対象です。鑑賞ポイントは多岐にわたり、葉の形、色、大きさ、花とのバランス、白斑による模様などがあります。
最もわかりやすいのが形。葉の先端が金魚の尾びれのように3つに分かれています。
錦魚葉椿の錦魚のような形をした葉を見て「かわいい!」と思う方は多いでしょう。花はシンプルな桃色の一重なので、むしろ花より葉の方が人気のようです。
錦魚葉椿のように通常とは少し異なる特徴的な形をした葉を「変わり葉」と言います。よく知られるのは、錦魚葉、盃葉、梵天葉、柊葉、鋸葉、桜葉、百合葉、などがあります。
梵天葉は錦魚葉より強くくびれて主脈が裏側に突き抜け、葉の裏に小さな葉がもう一つぶら下がっているような状態で、見るからに不思議な形です。梵天葉を持つ代表的な品種の「梵天白(ぼんてんじろ)」は白色一重の大輪での花を咲かせます。盃葉は葉の中心部あたりがへこんで盃のようです。
<錦魚葉(錦魚葉椿)> <梵天葉(梵天白)> <盃葉(盃葉椿)>
鋸葉は葉の縁が鋸の様にギザギザしています。柊葉、桜葉、百合葉はそれぞれの植物の葉に似ているのでそのように呼ばれます。
<柊葉(柊葉椿)>
このような変化が、葉先が2~3枚に分かれるもの、盃状になるものなど変化に富む「七変化椿」という品種もあります。江戸時代から知られた古典品種です。
葉の面白さや美しさは花期以外でも楽しめるので、品種の人気を左右する要素となります。
引用・参考:
最新日本ツバキ図鑑、日本ツバキ協会編、誠文堂新光社、2010
現代椿集,日本ツバキ協会,講談社,1972
最新椿百科,横山茂編集、野口慎一ほか,淡交社,2022
見驚(けんきょう)
花:白、八重、蓮華咲き、しべは小唐子状、中~大輪。花期は4月。1695年の『花壇地錦抄』に白見驚(しろみおどろき)と載る。(最新日本ツバキ図鑑)
蓮華咲き
蓮華咲き(れんげざき)は八重咲きの一種で、各花弁が中折れして弁端はゆるく反り、花弁と花弁の間に隙間ができて、花全体がバランスよく立体的に広がって咲く形です。代表的な品種に「春の台」「羽衣」「都鳥」などがあります。いずれも優美な姿をしていて人気の高い品種です。
引用・参考:
最新日本ツバキ図鑑、日本ツバキ協会編、誠文堂新光社、2010
菊更紗(きくさらさ)
花:淡桃色地に紫紅色の縦~小絞り、千重、しべに宝珠ができて、しべ見えず、中輪。花期は11~4月。葉:長楕円~楕円、中形、外曲。樹:横張り性、強い。来歴:1739年の「本草花蒔絵」に載る、紅花を桃菊という。(最新日本ツバキ図鑑)
菊更紗の花について「縦~小絞り」と記載がありますが、「絞り」は花に現れる模様で、鑑賞の重要な要素です。
花の地色に色違いの部分が混じって模様になるものを、大きく分けて「絞り」と「白斑」と呼びます。
「絞り」は、白地に赤の条斑(じょうはん:細長いすじ状のまだら模様)が入るもので、個々の条斑の輪郭がはっきりしていています。原因は遺伝によるものとされます。
もう1つは地色に白い斑が入る「白斑」で、白斑の形や大きさは不定形で、その輪郭はぼやけています。原因はウイルスによるとされます。
ちなみに「斑入り」というと椿では白斑を指すことが多いですが、植物全般では「斑(はん、まだら)」の言葉の意味の通り「違った色が所々にまじっていたり、色に濃淡があったりすること。また、そのものや、そのさま。」を指して、「絞り」も「斑入り」の一部として扱われる場合もあります。
模様の種類(絞り・覆輪・ぼかし)
絞りは重要な鑑賞要素ということで、大きさや形状などによって、縦絞り(たてしぼり)、小絞り(こしぼり)、吹掛け絞り(ふきかけしぼり)などと呼び分けされることがあります。
また覆輪・ぼかしなどの模様も、も白覆輪(しろふくりん)、紅覆輪(べにふくりん)、底白(そこじろ)、底紅(そこべに)などと細かく呼び分けされることがあります。これらの呼び方は園芸家によって慣習的に呼ばれているものであり、詳細な規定があるわけではありません。
こうした模様は、一つの花に複数の型が現れる事があります。例えば、縦絞りと白覆輪(江戸覆輪、光源氏など)、小絞りと吹きかけ絞り(唐錦など)、縦絞り、小絞り、吹きかけ絞り(草紙洗など)などです。
7月の菊更紗は「縦~小絞り」とあるように、縦絞りや小絞りが数多く入っています。
引用・参考:
鈴鹿の関/撮影:高野末男 (大島椿椿のカレンダー2024より)
鈴鹿の関(すずかのせき)
花:濃紅地に白斑が入る八重、小さい筒しべ、花糸淡紅色、中~大輪。花期は4月。葉:楕円、中形、深緑色。樹:立性。来歴:1879年の伊藤「椿花集」に載る、現在市販の本種は紋繻子と区別しにくい。(日本ツバキ・サザンカ名鑑)
椿の特徴を見比べる時、どのような形の咲き方をしているかという「花形(はながた)」が大きな目安になります。
鈴鹿の関は「八重」とある通り八重咲きです。一重咲きのヤブツバキと比べて花弁の枚数が多いことが分ります。
花型は花弁の枚数や雄しべの現れ方などによっていくつかのパターンに分類されます。それぞれのパターンの特徴と名称が分ると、同じ様に見ていた花も少しづつ区別ができるようになります。
代表的には以下のような花形があります。
一重咲き(ひとえざき)
八重咲き(やえざき)
唐子咲き(からこざき)
牡丹咲き(ぼたんざき)
獅子咲き(ししざき)
二段咲き(にだんざき)
千重咲き(せんえざき)
図は「色分け花図鑑 椿」桐野秋豊 より引用
引用・参考:
大島椿椿のカレンダー2024
日本ツバキ・サザンカ名鑑,日本ツバキ協会編,誠文堂新光社,1998
色分け花図鑑 椿,桐野秋豊,学研,2005
日本椿集,津山尚、二口善雄,平凡社,1975年
現代椿集,日本ツバキ協会,講談社,1972
最新椿百科,横山茂編集、野口慎一ほか,淡交社,2022
枝変わりの花が咲くツバキ
ツバキは品種ごとにそれぞれ花の姿形や色、模様、大きさなどに個別の特徴があります。逆に言うと同じ品種名のツバキは同じ花が咲きます。
しかしながら時折、1本の木に枝によって異なる色や模様の花が咲くことがあります。これを枝変わりと言います。
例えば「蝦夷錦」は白~淡桃色地に濃紅色の縦、小絞りの入る八重咲きの花が咲きますが、成木になると所々に赤一色、白一色の花も咲きます。1本の木で3色の花が咲くことから、シーボルトは蝦夷錦を「トライカラー」(tricolor:3色の)と呼びました。
蝦夷錦(えぞにしき):標準的な花は白~桃色地に濃紅の縦、小絞り、八重、筒しべ。右側に赤花枝変わりが咲く。
咲き分け
この枝変わりが木のいたるところで起こり、1本の木でいくつもの花色や絞り、覆輪など多彩な花が咲くことを、特に「咲き分け」と呼びます。
花弁が散ることで知られる「五色八重散椿」は有名な咲き分け花です。他にも「千葉五色」「想いの儘」「日月」「四海波」(中部)などがあります。いずれも華やかで美しく人気があります。
「五色八重散椿」の咲き分けた様子
それぞれの花
このように一つの木の中で枝変わりした花も同じ品種として捉えられるものがある一方、枝変わりした花が独立した別の品種となる場合もあります。
蜑小舟とそこから生まれた枝変わり品種
2024年カレンダーの表紙を飾る「蜑小舟(あまおぶね)」もそうした枝変わり品種です。
蜑小舟(あまおぶね)
朱紅色の八重、蓮華咲き、筒しべ、中~大輪。沖の浪の紅花枝変わりとされる。
蜑(あま:海女・海士・海人)は海で魚貝を採る者、または藻塩(もしお)を焼く業をする者。つまり蜑小舟とは海で魚・貝などの漁をする小舟のことです。
「蜑小舟」は「沖の浪」からの枝変わり品種とされています。同じく「沖の浪」からの枝変わりとされる品種に「藻汐(もしお)」があります。さらに「藻汐(もしお)」からの枝変わりに「釣篝(つりかがり)」があります。いずれも海に縁があり風情のある素敵な名前です。
枝変わり品種として有名なものに「イカリ絞り」枝変わりの「プリンセス雅子」があります。
枝変わり品種は数多くありますし、花だけでなく葉に覆輪が出る枝変わりもあります。
また園芸品種からではなく、野生のヤブツバキの枝変わりや胴吹き芽から特徴的な花が生まれて独立した園芸品種になることもあります。「黄泉の銀花(よみのぎんか)」「平戸佗芯(ひらどわびしん)」「天倫寺月光(てんりんじがっこう)」などはそうした野生のヤブツバキの枝変わり由来の園芸品種です。
こうしたツバキの変容のしやすい性質は数多くの園芸品種を増やしてきました。園芸家にとって魅力的な植物である由縁と言えるでしょう。
引用・参考:
白玉(しらたま)
花:白、一重、やや抱え性の筒咲き、筒しべ、蕾が丸いのが特徴、小輪。花期は10~3月。葉:丸みのある楕円、中形。樹:立性、強い。来歴:江戸期からの古典品種、京都の名椿のひとつ、別名:初嵐白玉。(最新日本ツバキ図鑑)
「白玉」と呼ばれる椿
元来、白い一重の椿を美称して白玉と呼んだので、特定の品種を指したものではありませんでした。それが花屋で切り花として売られる時に「白玉」と呼ばれたり、特定の木から切り出した花を「○○白玉」などと区別したりすることで多くの「白玉」が世に生まれました。
日本が椿との付き合いが長い故、園芸の歴史が古い故のことであり、どれが本物か偽物かという話ではないのだと思います。
ただ品種同定するうえで不都合なので、徐々に整理されてゆきました。現在は日本ツバキ協会による『最新日本ツバキ図鑑』に準じることが主流になっています。
さまざまな白玉椿
植木屋では一重の白の実生花を俗に「藪白」と呼び、販売名を「白玉」とするそうです。
切花生産者は花型、葉形が美しく切り花に適した白玉椿を育てて、「白玉」の名で切り花として出荷しました。そこから考えると白玉と呼ばれる椿は存外多いようです。
白玉と呼ばれた代表格として現在の品種名で「初嵐」という品種があります。早咲きで端正な一重の白い椿で、蕾や咲き初めにほんのり桃色を帯びています。一番わかりやすい違いは、「白玉」の蕾は丸く、「初嵐」の蕾の先は尖っています。
ほかの白玉椿と類似点が多くとも独自の美しさがあったので「初嵐」は品種として独立して今も愛される名花となったのでしょう。
その他に白玉として知られる椿をいくつか紹介します。
・本白玉(ほんじろたま):花は白一重、広いラッパ咲き、ヤブツバキより大型。葉も花も整っているが、枝の伸びが遅く切り花に適さない。皆川治助が実生で選出。(日本椿集)
・赤山白玉(あかやましらたま):安行あたりで出た初嵐の実生品種と思われる。枝の伸長が初嵐に勝り、活花として持ちが良く、早咲き。花形はやや劣り、蕾はいびつな丸形。(日本椿集)
・葛西白玉(かさいしらたま):花は純白一重、椀型で大きく、蕾は細長い。(日本椿集) 「現代椿集」では花はややクリーム色が買った白一重の中輪、母樹は江東区葛西にあるとある。
・角葉白玉(かくはしらたま):臘月の東京名。臘月:純白一重、花弁は広大で弁端に小波状のた縦皺がでる。極早咲き、葉は大型。名古屋地方では「盆白玉」の別名。(日本椿集)
・盆白玉(ぼんしらたま):臘月の名古屋地方での呼び名。
・霊鑑寺白玉(れいかんじしらたま)
・『椿伊呂波名寄色付』(1859)の「白玉(はくたま)」:白三四重大輪割しべ。(現代椿集)
・『椿伊呂波名寄色付』(1859)の「志ら玉(しらたま)」:本白一重筒しべ早咲。(現代椿集)
白玉に込められた思い
蕾が玉のように丸く愛らしい玉椿。この場合の玉(たま)は丸い形状の意味合いでしょう。玉は「ぎょく」、宝石の意味があります。白玉は白い宝石の意味であり、真珠の古い呼び名でもあります。
玉(ぎょく)には「すぐれて美しいもの。りっぱなもの」という意味もあります。「玉椿」という言葉がありますが、これはもちろん「美しい椿」の意味です。
白く丸い蕾をつける椿だからと単に丸い形状を示すなら「白丸」で良かったでしょう。「白玉」という字を当てたのは、白い椿が、美しくて価値がある、好ましい、めでたい、といった気持ちを抱かせたからだと思います。
引用・参考:
大島椿椿のカレンダー2024
最新日本ツバキ図鑑,日本ツバキ協会編,誠文堂新光社,2010
日本椿集,津山尚、二口善雄,平凡社,1975年
現代椿集,日本ツバキ協会,講談社,1972
コトバンク https://kotobank.jp/
2024-4-25
華麗な椿「光源氏」
今年の大河ドラマ「光る君へ」は『源氏物語』の作者、紫式部の物語です。
『源氏物語』の主人公「光源氏」は、桐壺帝の第二皇子として生まれ、光り輝く美貌と才能に恵まれて「光る君」と呼ばれながら、臣籍降下して源氏姓を名乗ります。
その同じ名をもつツバキが江戸期からある「光源氏」です。牡丹咲きの大輪で、淡桃色地に縦絞り、花弁の縁に白覆輪まで入るという大変に華やかな姿です。 多くの人は「さすが『源氏物語』の光る君」と感心しますが、椿研究家の桐野秋豊氏は「源氏」と付くのは白覆輪を端が白い=「白端」ととらえて源氏の「白旗」になぞらえたものだと言っています。他の源氏と名の付く花には白覆輪が入らないものがあるので、すべてが源氏=白旗に由来しているとは限りませんが、この「光源氏」については、その華麗な容姿と花弁を縁取る白覆輪に白旗の意味を込めた、ぴったりのネーミングであることは確かです。
『源氏物語』の椿
紫式部の『源氏物語』には、椿にまつわる記載が2か所できます。ひとつは「若菜」の帖の蹴鞠の場面の椿餅。もう一つは「玉鬘(たまかずら)」の帖の椿市です。
「若菜」蹴鞠の場面の椿餅:
「若菜」は、源氏の屋敷での蹴鞠が催された折、若い柏木が源氏の妻・女三宮を垣間見て恋に落ち、やがて女三宮との間に薫が生まれ、その罪悪感から柏木は死んでしまうという話です。
この当時、椿餅は蹴鞠の時に食べるものでした。
蹴鞠が終わり他の公達がみな椿餅、梨、柑子のような物を食べるなかで、恋煩いの柏木は椿餅を食べませんでした。
古来、餅は神聖な物で、椿もまた破邪の木とされました。蹴鞠の毬は鹿革で作られています。仏教で獣の皮は不浄な物なので、椿餅を蹴鞠の時に食べる風習には、その汚れを払い厄難を退けるが意図あったのでしょう。
柏木が椿餅を食べなかった事は、その後の不幸を暗喩する伏線のように思われます。
「玉鬘(たまかずら)」の椿市:
「玉鬘」は、若かりし頃の光源氏の愛人だった夕顔の娘である玉鬘(頭中将と夕顔との子)が成長した後の話です。
夕顔の死後、玉鬘は乳母に連れられて九州へ流れ、そこで美しく成長します。土着の豪族に強引な求愛を受けたためにそれを拒んで都へ上京しました。母夕顔の死を知らぬまま再会を願って長谷寺へ参詣する途上で、偶然にも夕顔の侍女だった右近に再会します。そのドラマチックな場所こそが、長谷寺詣での門前である椿市の宿でした。長谷寺に参詣するには椿市で仏前に供える灯明などを用意し仕度を整え、参詣後には精進落しなどをしました。
椿市(海石榴市)は古代から続く市でした。遣隋使を迎えた場所であり、仏教伝来の地でもあります。椿市は「枕草子」「蜻蛉日記」「小右記」などにも出てくることから平安時代にも栄えていたことが分ります。
「玉鬘」の帖は光源氏の昔の恋人の娘(玉鬘)が登場したり、その娘が頭中将と父娘の名乗りしたり、美貌の玉鬘を巡って男達が右往左往したりと、かなり盛りだくさんな話です。「玉鬘」とは美しい髪のことで、毛髪が伸びるのは本人の意にはならない事から運命を象徴します。玉鬘は数奇な運命に翻弄されますが、流されることなく見事に人生を選び取ることで光源氏を感心させます。
引用・参考:
最新日本ツバキ図鑑,日本ツバキ協会編,誠文堂新光社,2010
古典セレクション 源氏物語9,阿部秋生,小学館,1998
古典セレクション 源氏物語6,阿部秋生,小学館,1998
【椿information】2024-4-10
酒中花(しゅちゅうか)
花:白地に紅覆輪、紅色の縦絞が入る、牡丹咲き、不完全な散りしべ、中輪。花期は3~4月。葉:長楕円~楕円、中~大形、鋸歯は粗い。樹:立性、枝は粗。来歴:1859年の「椿伊呂波名寄色附」に載る(最新日本ツバキ図鑑)
花を華麗に彩る「覆輪」
幅広く大型の花弁の縁を、紅色の短い線状の絞りが縁取る様子は印象的です。このように花弁の縁が地色と別の色で縁取られた模様を「覆輪(ふくりん)と呼びます。
酒中花は白地に紅色で縁取られた紅覆輪の花です。他に紅覆輪の品種として「プリンセス雅子」、肥後椿の「王冠」などがあります。
逆に紅地色が白で縁取られたのが白覆輪。代表には有名な「玉之浦(たまのうら)」という品種があります。華やかな雰囲気で人気のある「光源氏」も白覆輪です。
赤や白の覆輪は花を華麗に彩り、人気があります。特徴的な姿はビギナーでも名前を覚えやすいと思います。
因みにサザンカでも同名の「酒中花」という品種があり、こちらは一重の白地に紫紅色の覆輪が入ります。
引用・参考:
大島椿椿のカレンダー2024
最新日本ツバキ図鑑,日本ツバキ協会編,誠文堂新光社,2010