椿カレンダー7月「菊更紗」、【椿の基礎知識】絞り

菊更紗/撮影:高野末男 (大島椿椿カレンダーより)

菊更紗(きくさらさ)

花:淡桃色地に紫紅色の縦~小絞り、千重、しべに宝珠ができて、しべ見えず、中輪。花期は11~4月。葉:長楕円~楕円、中形、外曲。樹:横張り性、強い。来歴:1739年の「本草花蒔絵」に載る、紅花を桃菊という。(最新日本ツバキ図鑑)


菊更紗の花について「縦~小絞り」と記載がありますが、「絞り」は花に現れる模様で、鑑賞の重要な要素です。
花の地色に色違いの部分が混じって模様になるものを、大きく分けて「絞り」と「白斑」と呼びます。
「絞り」は、白地に赤の条斑(じょうはん:細長いすじ状のまだら模様)が入るもので、個々の条斑の輪郭がはっきりしていています。原因は遺伝によるものとされます。
もう1つは地色に白い斑が入る「白斑」で、白斑の形や大きさは不定形で、その輪郭はぼやけています。原因はウイルスによるとされます。
ちなみに「斑入り」というと椿では白斑を指すことが多いですが、植物全般では「斑(はん、まだら)」の言葉の意味の通り「違った色が所々にまじっていたり、色に濃淡があったりすること。また、そのものや、そのさま。」を指して、「絞り」も「斑入り」の一部として扱われる場合もあります。

模様の種類(絞り・覆輪・ぼかし)
絞りは重要な鑑賞要素ということで、大きさや形状などによって、縦絞り(たてしぼり)、小絞り(こしぼり)、吹掛け絞り(ふきかけしぼり)などと呼び分けされることがあります。
また覆輪・ぼかしなどの模様も、も白覆輪(しろふくりん)、紅覆輪(べにふくりん)、底白(そこじろ)、底紅(そこべに)などと細かく呼び分けされることがあります。これらの呼び方は園芸家によって慣習的に呼ばれているものであり、詳細な規定があるわけではありません。

こうした模様は、一つの花に複数の型が現れる事があります。例えば、縦絞りと白覆輪(江戸覆輪、光源氏など)、小絞りと吹きかけ絞り(唐錦など)、縦絞り、小絞り、吹きかけ絞り(草紙洗など)などです。
7月の菊更紗は「縦~小絞り」とあるように、縦絞りや小絞りが数多く入っています。

引用・参考:

  • 斑入り植物のはなし なぜ、一本の木から違う花が咲くのか,笠原基知治、斑入り植物友の会,2008
  • 最新日本ツバキ図鑑、日本ツバキ協会編、誠文堂新光社、2010
  • コトバンク デジタル大辞泉:https://kotobank.jp/word/%E6%96%91-601844
  • 色分け花図鑑 椿,桐野秋豊,学研,2005
  • 現代椿集,日本ツバキ協会,講談社,1972
  • 最新椿百科,横山茂編集、野口慎一ほか,淡交社,2022