大島椿椿カレンダー1月の珍秀錦は、小ぶりな花ながら複雑に現れた白斑のおかげで華やかな存在感があります。
珍秀錦(ちんしゅうにしき)/撮影:高野末男 (大島椿椿のカレンダー2024より)
珍秀錦(ちんしゅうにしき)
緋紅地に大小の白斑がはいる。一重、ラッパ咲。閉蕊。小輪、花期は春。葉は長楕円、小、鋭尖頭鋭足、ゆるく外曲、小鋸歯。樹形は横張性、樹勢は並。ヤブツバキの選抜で、花は胡蝶侘助を思わせる。久留米産。(『原色日本の椿写真集』より引用)
白斑について
植物に地色の違う文様が現れると「斑入り」と呼びます。花弁や葉に斑が入ると単一色よりも多様な表情となり観賞価値が高まるので園芸的に好まれます。「斑入り」の現象は遺伝子によるものとウイルスによるものがあるとされています。
珍秀錦のように、赤い花弁に不規則な形で現れる白い斑入りを「白斑(はくはん)」といい、ウイルスが要因だと考えられてます。このウイルスはツバキに重篤な健康被害を与えない一方、園芸的な魅力を増すものとして受け入れられています。
白斑は花弁の赤い地色が白く抜けた状態で、赤地との境目は不鮮明です。形は小さな丸や大きく丸みをおびた形、不定形な形などパターンがあります。大きさや形によって、「白星斑(星斑)」や「雲状斑(うんじょうはん)」などと呼びますが明確な定義はないようです。特に「横杢斑(よこもくはん)」と呼ぶ模様は、材木の板目模様や年輪のようにギザギザと波打つ模様をしています。
白斑の形は一種類だけ現れたり組み合わせで現れたりします。品種によって現れ方に特徴があるものもあり、花型や地の色と相まってその品種の魅力をつくりだす大切な要素になっています。また、赤一色の「明石潟」と白班のある「大虹」のように、白斑の有無で品種名が異なるツバキもあります。
白斑が魅力的なツバキの例
天ヶ下(あまがした)
荒獅子(あらじし)
正義(まさよし)
蜀江(しょっこう)
月の輪
大虹(おおにじ)
引用・参考:
大島椿椿のカレンダー2024
原色日本の椿写真集,ガーデンライフ編集部,誠文堂新光社,1980
斑入り植物のはなし,笠原基地治,斑入り植物友の会,2008